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Omake



 今まで全く作品に関する考察や設定、裏話を書いてみたことがなかったので、少しだらだらと述べてみようと思います。
 TSMはあまり謎を残さないようにしようと考えて作っていたので、わざわざ書くようなこともない気がするのですが、自分にとって初めて作る雰囲気の作品だったので、反省も兼ねて。
 駄文な上、長文です。思い出したことなどをダラダラ書いています。お暇な方はよければお付き合いください。

・ジャンル
 このゲームのストーリーを分類するとしたら、異界冒険譚になるかと。映画で言ったらパンズ・ラビリンスが近いような気がします。特にストーリーとしては珍しくもないものですが、考えてみれば私はそういう不思議な世界の話を作るのは初めてでした。
 異界冒険譚っていうのは、主人公が異界から現実世界へ帰るか帰らないかという点に焦点が当てられることが多いですよね。前述のパンズ・ラビリンスの主人公は戦争という悲しい現実から逃れて、夢の世界に逃走してしまい、そのまま帰ってきません。私も数々の前例にならって、エンド分岐の一つを異界から現実へ戻るか、戻らないかに設定することにしました。
 各エンドについては後で書きますが、エンドを分ける一つの要因として異界、現実世界どちらを選ぶかがあったということをまず先に述べておきます。

・何でサンドマンなのか
 サンドマンって日本ではポピュラーじゃないんですよね。私はなぜかサンドマン幼い頃から知っていましたが、知っていたというだけで、それを題材に何かを作ろうとは考えていませんでした。
 では何故サンドマンを使ってゲームを作ろうと思ったのかですが、ある曲がきっかけでした。
 私はあるメタルバンドが好きなのですが、そのバンドの曲を聴いていて、ふとこの曲のような雰囲気のゲームを作りたいと考えたのです。だからゲームにはその曲を彷彿とさせる言葉やシーンが多く出てきます。きっと気づかれた方も多いでしょうね。そして全体的にゲームに使用する曲にメタル・ハードロックを選んだのも、それが理由です。
 その曲とはMetallicaのEnter Sandmanです。本当にこの曲が大好きで、ゲームを作っている間ずっと聴いてました。知らないという方はぜひ聴いてみてください!アルバム'Metallica'のだけでなく、'S&M'バージョンも荘厳でかっこいいですよ。

・ストーリーについて
 この作品のストーリーについては、TCMを作っている頃にはもう全て考えてありましたので、製作中ストーリーについて悩むことはほぼありませんでした。ただ一つ悩んでいたのが、これをTCMの後続として公開すべきかどうかでした。ストーリーも雰囲気も全然違うし、TCMをプレイした方からしてみれば何じゃこりゃとなるだろうことが必至だったためです。
 そんなことをTCM製作時から悩んでいたのですが、さらに後続の作品としてTBMを作ろうと考えた時に、同じシリーズだからって同じ雰囲気やストーリーでまとめるのはやめようと諦めの境地に入りました。もともと飽き性で、自分が飽きて放り出す前に思いついたゲームはどんどん作っていこう!という意思のもとゲーム制作をやっているのですが、シリーズとしてやっていくには作者自身が「飽きない」ことが重要だと考えています。だからなんとかマンシリーズは作者が「飽きない」ために色んなキャラを出し、色んなストーリーをそれぞれ異なった雰囲気で描きたいのです。その結果TCMは静かで重々しく、TSMはヘンテコなことがバンバン起こる不思議な話、という感じになりました。
 できれば今後の作品も、似たような内容や雰囲気にはしたくないと考えています。TCMの感動っぽさ?がかなり好評を得ていたようですが、それに似た話が今後出てくるかどうかは私にも分かりません。でも出てこないと思う(小声)
 さて、TSMは一人の不眠症の少女の話ですが、なぜ不眠症にしたのか?ということについてお話しさせていただきます。
 このゲームはEnter Sandmanのような雰囲気にしたいと前述しましたが、皆さんはメタルや激しい曲を聴きたいと思うのってどんな時なのでしょうか?作者としては、それはイライラしている時なんです。朝の電車のラッシュ時、眠いのに人混みに押しつぶされてチキショー!!クソッタレエエエとなっている時とかに聴くんです。小心者なので音漏れしないようには気をつけてますが。
 TSMはまさにそれなんです。眠いのに眠れない苛立ち、周囲の人に対しての不満、それを晴らすためにソフィーが色々(大体物理)行動する、眠いのに眠れない、人間のために働き続けなければならないサンドマンの憔悴と決意。このゲームのコンセプトはそれでした。
 まあコンセプトをちゃんと決められたことに関しては良かったのですが、問題はそれがホラーとして成り立つのか?ということですよね。「小さな子供が怖がるようなホラー」のゲームにすることを心がけていたし、なんせ敵は妖精ですから。実際に製作を始めて、ああ全然怖くないわと実感し、今作は「ホラー風味」にしようという逃げに入りました。TCMも個人的には全く怖いと思わないのですが、怖いと仰る方もいらっしゃったので、ひょっとしたらTSMを怖いと感じる方もいらしゃるかも知れません。しかしあくまでTSMは、ちょっと不気味なフェアリーテイルととっていただければ嬉しいかなと。

・ソフィーについて
 ソフィーには母親がいません。母親は彼女が幼い頃に銀行強盗に撃たれて亡くなりました。妻を失った夫、ソフィーの父親は娘を何とか幸せにしてやろうと仕事に没頭します。その結果、ソフィーは長い間誰もいない家で一人過ごし、家族の愛を実感できずにきてしまったのです。
 回想シーンにありましたが、それでもソフィーは幼い頃はとても元気いっばいの子で、父親に甘えていました。父親が過労から倒れ、叔母から言われた「いい子にしていれば父親は元気になる」という言葉を信じ、幼少のソフィーは「いい子」になろうと決心します。ワガママは言わない、嫌いな食べ物も食べる、夜は一人でもちゃんと眠る、そんな、父親には迷惑をかけない「いい子」になろうとしたのです。
長らく自分の不満や考えを口にできなかったソフィーは、高校生活でも同様に自分を押しつぶしています。いじめやからかいにも耐え、ただ見ているだけの親友も許容し、シスターにも認められる「優等生」であろうとします。ソフィーの苛立ちや不満は募る一方で、その結果それが不眠症として出てきてしまったのです。
 不満を押しつぶす、良い体面を保つというのは大人のやることですよね。純粋な子供はそんなことしないのが普通だと思います。ソフィーの目指す「いい子」というのは、ある意味大人の姿なんですよね。実際、親友のアンからは大人っぽいと言われています。ソフィーが精神的に早熟せざるを得なかった子供、という存在であることからゲームのストーリーはスタートし、彼女がどのように自分の行く道を決めるかでエンドは分岐します。
 ストーリー的なエンド分岐で、異界に残るか現実世界へ帰るかがあると前述しましたが、もう一つの分岐としてソフィーが偽物の大人であり続けるか、失っていた子供の姿(ありのままの自分)を取り戻すかという点がありました。実際にはその分岐がゲーム上でどのように現れるかというと、サンドマンの生死です。作中で歯の妖精が、妖精なんていないと言うソフィーに対して「お前さんらがそういうことを言う度に妖精が一人ずつ死んでいくんじゃ!」と言っていますが、これは有名な言葉ですね。子どもが大人へと成長する段階で妖精を否定し始めると、その子の中で妖精は死んでしまうのです。
 The Sand Manでもそうです。偽物の大人であるソフィーがサンドマンを殺してしまうと、彼女はもう子どもに戻れなくなってしまいます。だからQueen of nightやSleep with one eye openのエンドでは、彼女は偽物の大人になってしまった故のエンドなんですよね。その二つの違いは、異界に残るか現実へ戻るかという点ですが、それは後で詳しく述べます。

・妖精について
 このゲームに出てくる妖精たちは、何らかの共通点があります。ニクシーも歯の妖精もドワーフもサンドマンも、皆自分の仕事に誇りを持っていて、しかしその仕事による弊害を抱えているという点です。実際の妖精の記述ではそんな事実?はなく、完全に当ゲームのみの設定です。特にビジュアルに関しては自分の描きたいように描いたので全く異なっており、ドワーフなんかは全然違う様相なんですよね。本当は長いヒゲがあるそうです。そして歯の妖精なんかも、本当はあんな気持ち悪い顔じゃないと思うんです。実は最初、妖精たちは総ブサイクにする予定だったんですが、ニクシーとユニコーンが当てはまらないので総ブサイク設定はやめました。ブサイクの汚名はドワーフにのみ被ってもらいましたが、歯の妖精もどっこいどっこいですね。
 妖精たちはそれぞれ仕事とその仕事に関する悩みを抱えています。ストーリーの発端となったサンドマンの行動も、彼の悩みが元になった訳ですし。仕事と弊害、という2点を与えた理由としては、妖精たちを疑似的な大人として描きたかったためです。「仕事は辛いけど毎日楽しくやってるよ」というおおらかな大人らしさを持った、そして子供(ソフィー)を見守る存在として表現するためでした。彼らはソフィーが不眠症であることを告げても驚かないし、サンドマンに用があるということをなぜか知っています。それへ妖精が子ども自分を気遣ってくれる存在を長らく得られなかったソフィーをそんな妖精たちの世界に放り込むことで、彼女にありのままの子どもとしての自身を取り戻させることが目的であり、それがGOODENDへ繋がるのです。

・子守唄について
 サンドマンが作った子守唄は、人の悩みを消し、安心感を与えることで彼らを眠らせるためのものでした。ソフィーの場合は親友に「嘘つき」だと言いたい気持ち、いじめっ子を吊るし上げてやりたい気持ち、自分の父親を縛りつける会社をめちゃくちゃにしてやりたい気持ちが具現化されて、彼女の眼前に現れます。
 それにしてもなぜ黒い影(便宜上Liarsと名付けています)、軍隊、ドラゴンといった唐突な形になって現れたのか?そのヒントは作中にあります。ブラムバーグショッピングモールのシアターで、映画の看板が4つありますよね。Hide and See, Kenny got his gun, Dragon Hunter, Your girlの看板です。ちなみに、それぞれHide and Seek, Johnny got his gun, Monster Hunter, My girlと、実際にある映画タイトルのパロディです。
 看板を調べると分かるのですが、ソフィーはその映画やゲームについて知っているんです。予告を見たとか、古い映画で見たことがあるとか、ゲームをやったことがあるとか。つまりソフィーの中に、それぞれの世界観の土壌があった。ついでに、ソフィーはそれらに対して怖いという感想を持っている。そして子守唄の見せたものを考えれば、察しがつくかと思います。ソフィーが怖いと感じる状況に、ソフィーを苦しめる人々を投げ込んだ状況が子守唄だった訳ですね。子守唄の思惑通りにいかなかったのは、ソフィーがかなり自分を抑えこんでいたために、自身の中の「ザマーミロ!!」に気づかなかったからでしょう。もし気づいていたら、ソフィーは子守唄によってスヤァ…させられていたんじゃないでしょうか。
 子守唄がなぜデヴィッドの姿となって、ソフィーの味方のように振舞っていたのかというと、それは単純にソフィーが側にいてほしいと願っていたからですね。子守唄が実際のデヴィッドより若干柔らかい口調で話し、執拗にソフィーと一緒にいようとするのは、ソフィーが「そうあってほしい」と願うデヴィッドの姿になっているためです。ソフィーの願望がそのまま具現化されている訳です。
 ところで子守唄は、ピンクの宝石の有無によって姿を変え、またそれによってエンドが分岐します。サンドマンが書いたメモから分かるように、あの宝石はサンドマンが人間の心を研究するために人間から「借りて」吸い出したものです。色のイメージから想像できるかと思いますが、ピンクの宝石は恋心を形にしたものです。
 ユニコーンって、実はすごい凶暴な生き物なんですよね。しかし、処女の腕の中ではおとなしくなるという生き物。ゲーム内では「恋する女の子が大好き」と柔らかい書き方をしましたが、要するに処女が大好きなんです。思い返してもらいたいのが、ユニコーンが最初にソフィーと交わした会話です。「彼氏いるの?」とか「好きな人いるの?」とか、不躾なことを聞いてソフィーを怒らせています。ドワーフが「妖精は人間のことなら何でも知ってるもの」と言うとおり、実はユニコーンは最初からソフィーが経験のない女の子だと知ってるんですよ。それをわざわざ聞き出しているのは、ソフィーが正直に答えるかどうか試してるんですよね。彼女が純真なオンナノコであることを確認してるんです。だからソフィーが偽物のピンクの宝石を持っていっちゃうと、ものすごく怒ります。俺のこと騙そうとしやがったな!!という感じですね。あっちがユニコーンの本性なんでしょう。
 そんな訳でピンクの宝石は恋心であり、ソフィーはそれをユニコーンに渡しちゃった時点で、デヴィッドへの恋心はなくなっちゃってます。そして子守唄がデヴィッドの姿をしていたのは、前述したとおりソフィーがデヴィッドに恋しており、彼に側にいてほしいと願っていたためです。だからピンクの宝石を吸い出した後は、子守唄はデヴィッドの姿じゃなくなります。何でそれがエンド分岐につながるかと言うと、そもそもソフィーのデヴィッドに対する恋は健全なものではなくて依存心を誤解したものであり、それを持ち続けてしまうのはソフィーが子どもに戻ること対する障害となるからです。

・デヴィッドについて
 TCM主人公であるデヴィッドは、ソフィーにとって恋愛の対象でした。辛い時に優しく声をかけてくれ、話を聞いてくれるのが彼だけだったからです。しかしそれは純粋な恋ではなく依存心によるもので、デヴィッドを父親の代わりとして見てしまってのことでした。何となく雰囲気が父親と似てるんじゃないですかね。
 さて、プレイヤー様の中には「これわざわざデヴィッドじゃなくてもよかったんじゃね?」と考える方もいらっしゃるかも知れません。まさにその通り、デヴィッドじゃなくても、ごく普通に年上の優しい男のモブキャラクターを作っても良かったのだと思います。実際、TSMのストーリーを考え始めた時にはデヴィッドは出さなくてもいいかなと思っていました。なんとかマンシリーズは、色んなキャラクターを色んなシーンでもって描きたいと考えてましたし、わざわざデヴィッドを出す必要はなかったのです。
 ところで、The Crooked Manに関するご感想の中で結構多かったのが、「デヴィッドまじイケメン!!」というものでした。別に作者としてはデヴィッドはイケメンじゃなくて、単に童顔なだけだと思うんですけどね。でもまあ沢山の方が仰っているのだから、デヴィッドはイケメンなのじゃろうと、TCM公開後の作者は考えを改めるようになりました。
 そんな、画面の向こうの人たちにイケメンと持て囃されているデヴィッドに優しくされた、孤独と苛立ちを抱える女子高生はどんな感情を抱くのでしょうか?恋しちゃうに決まってる訳です。
 要するにデヴィッド君は女の子の恋愛対象として非常に設定しやすかったんです(笑) 鈍感っぽいから、自分が懸想されてるとかあんまり気づかなそうですしね。そんな訳でデヴィッドは無自覚のうちにソフィーを泣かせる存在として、TSMにて再登場することになったのです。GOODクリア後のキャラ紹介で下心がない分タチ悪いと書きましたが、彼の持ち味の一つである優しさや正直さは、別の視点から見ればそんないいモンでもないのよ、という自身の作品に対する皮肉のつもりでもありました。このあたりに関しては、頂いた数多くのご感想を参考にさせていただいたことになりますね(ゲス顔)
 ...と言うとなんかアレですが、今作にデヴィッドを出したことで、TSMから続くシリーズ次回作の流れも決定づけることができましたし、作者としてはとてもよかったと考えております。

・BADEND1: Queen of the Night(夜の女王)
 ピンクの宝石をユニコーンに上げ、サンドマンを殺害した状態のエンドです。
 前述したエンド分岐に関する2点で語るなら、ソフィーが異界に残る・偽物の大人でありつづけるという結末ですね。
サンドマンを殺してしまって子どもではいられなくなったソフィーは、自分を苦しめる人間世界へ戻ることを拒否します。サンドマンを殺したのは「あいつら」のせいだと実感し、自分の中の憎悪を明確にしてしまいます。ついでにピンクの宝石がないため、ソフィーはもう恋に恋する女の子じゃなくなっているんです。人間世界へ戻る理由が一切ないため、ソフィーは妖精の世界に残る決意をします。自分を苦しめる人間に対して「怒り」を抱き、恋心を失ったことで、ソフィーは夜の女王という存在になって、妖精の世界に君臨します。彼女はもう子守唄を必要とするような子どもじゃないし、好きな人に側にいてほしいと願うような女の子でもないんです。
 街で本屋を探索した方には分かるかと思いますが、そこにはある本が床に置いてあります。書いてある文章はオペラ「魔笛」より「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」、いわゆる「夜の女王のアリア」です。
 唐突ですが、このゲームのストーリーで描かれる「母」の姿は「怒り」と「癒し」という二面性を持っています。Queen of the nightというBADENDでは子どもであるソフィーが辛い現実によって苦しめられ、それを守るべき存在である「母」の「怒り」が表現されます。GOODENDを迎えた場合にはまた違った「母」の姿が出てきますが。
 ではなぜ、「夜の女王」なのか?子守唄についての段で子守唄が見せたものは全てソフィーの持つ知識、想像に基づいているということをお話ししました。この場合もそれが適用されます。サンドマンがいない世界で眠らずに生きていくには、ソフィーは夜を克服しないといけません。ソフィーは夜を従える存在として、いつか読んだことのある「魔笛」の「夜の女王」を無意識に思い浮かべたんじゃないでしょうか。そしてそうならなくてはというソフィーの願望を、子守唄が具現化した訳です。そして彼女は子どもとしての自身を苦しめた人間を憎む「母」=「夜の女王」になり代わります。GOODENDを迎えると分かるのですが、夜の女王となったソフィーの外観は彼女の母親にそっくりなんですよ。サンドマンが子どもの頃のソフィーの肖像に添えた文の中に、「君も母親のように素晴らしい女性になるだろう」とありますが、ある意味ではそれが叶っています。ただ、「太陽の女神」とは真逆の存在ですけどね。
 眠っている人間たちの「アホ面」を眺めることに快感を抱きながら、自分は眠らずに夜の世界の女王として生きる、それがQueen of the Nightというエンドです。

・BADEND2:Sleep with one eye open(片目を開けて寝ろ)
 ピンクの宝石を持っていて、サンドマンを殺害することで迎えるエンドになります。ちなみに3つの中で一番最悪なエンドです。
 BADEND1に比べて、ソフィーはサンドマンを殺してしまったことに関して何の感慨も持っていません。殺したんだねと問われても、「うん」としか答えず、人間の世界に戻らなきゃと現実的なことを言い出します。このへんのやけに落ち着いているところが、少し怖いところです。ソフィーは偽物の大人だから、妖精が死んだことに関しても、それが何よ?という状態なんですね。Queen of the Nightの方が、まだサンドマンを殺害して動揺していたあたり救いどころがあるのかも知れません。
 ソフィーはサンドマンを殺してしまったことで、偽者の大人の状態になっています。そしてピンクの宝石を所有しているため、デヴィッドに対する依存も残ったままです。要するに一番最悪な状態です。人間の世界に戻ったソフィーがデヴィッドを起こそうとしていますが、普通なら肉親である父を探して起こそうとかしますよね。でもそれをしていない。それはピンクの宝石を持っているからです。
そして何が一番問題かと言うと、サンドマンをやっつけてしまったことで、逆人間たちを目覚めさせることができず、また時間も12時で止まったままだということです。つまり何も解決していません。
 時が止まっているから、ソフィーは老いません。サンドマンが死んでしまったから人間たちは目覚めないし、またソフィー自身も眠ることができません。彼女は明けない夜の暗闇の中を、眠ることもできずに、ただ怯えて永遠に過ごすことになってしまいました。
 GOODENDでソフィーは、一人で眠るのは怖かったと言っています。なぜなら、暗闇の中、例えばクローゼットの中に誰かがいるんじゃないかという妄想をしてしまうから。片目を開けて寝る、ということはつまり、眠れないということです。視界の暗闇の隅で何かが動いたような気がして、両目を閉じることができないんです。
 サンドマンを殺害したソフィーはその代償として二度と眠ることもなく、子どもの頃感じていた恐怖と改めて向かい合わなくてはならなくなった。だから「片目を開けて眠る」しかない―――このエンドはそういうものですね。一番ホラーっぽいんじゃないでしょうか。

・BADEND3:Invisible Sweet Heart(見えない恋人)
 ピンクの宝石を持った状態で、サンドマンを眠らせた場合のエンドです。
 サンドマンが生きているから、ソフィーは偽の大人から子どもに戻れる状態ではあります。しかしマズイのは、ピンクの宝石を持ったままという点です。前述したとおり、ソフィーの抱く恋心は父親に向けられない依存心を、優しい年上の男性であるデヴィッドに向けてしまったものです。
 このエンドでは、若干ソフィーは駄々っ子のようになっています。「あんな世界帰りたくない!」「もう人間なんて嫌だ」と泣き、人間のままではいられないと言われても「あなたは側にいてくれるんでしょう?」なんてことを言って、妖精の世界に残ることを望みます。
現実では父親は構ってくれない、学校生活は辛い、好きな人には彼女がいる―――だからこっちの世界にいたいと願ってしまうんですね。子どもらしいと言っちゃ子どもらしい考えです。ティールームでの歯の妖精・ニクシーとの会話にあったフラグが見事に立ってしまった訳です。妖精の世界で生きるためには、人間ではいられません。だからソフィーは光の妖精となって、自分が願ったとおり妖精の世界に留まることになります。
 ところで光の妖精(他の妖精と区別するためにGlimmersと表記します)は夜の暗闇では生きられません。妖精の世界に夜が訪れれば死に、朝がやってくれば生き返る存在です。ドワーフは人間だって同じようなモンじゃろと言いますが、Glimmersは妖精の世界における擬似的な人間の姿です。歯の妖精やドワーフ達は、永遠を「ちっとの間」なんて言っちゃうような存在です。彼らは人間の想像が生み出した存在ですから、人間が地球は平らだと考えていた時期には、人間たちの世界を昼夜が交互にきっちり訪れるものだとしていました。その頃にはサンドマンも人間の世界の夜には仕事をして、昼に眠るという生活をしていたんです。でも人間たちが世界は丸くて、地球視点で見れば夜が途切れることはないと考えるようになってしまったから、眠れなくなってしまいました。また妖精たちは人間のように、自分たちを制約してくるような時間の概念を持っていません。人間には人間の時間があるけれど、妖精にはそれがないんですよね。まあ、妖精の世界でも朝昼夜はあるんでしょうが、それが人間の世界で適用される訳ではないんでしょう。そんな、時間を超越してのんびり生きている歯の妖精やドワーフ達と違って、Glimmersは朝・夜で生死が決まる、時間によって制約される存在です。妖精たちから見た人間も、そんな儚い存在なのでしょう。
 ソフィーは人間をやめてしまったけれど、今度は妖精の世界で擬似的な人間として生きることになります。でも子守唄が言っていたとおり、ソフィーはすぐ死ぬし、もう眠ることはありません。見方によってはBADではないのかも知れませんが、全てを投げ捨てて逃げてしまったという点では良い結末とは言えないんじゃないでしょうか。

・GOODEND1:Don't stay up late at night(遅くまで起きてちゃダメ!)
 ピンクの宝石がなく、サンドマンを眠らせた状態のエンドです。
 今までソフィーが子どもに戻るかどうかが要だとぐだぐだ述べてきましたが、このエンドはそれを叶えたことで迎えられるものです。
そもそも、ソフィーの冒険はどこから始まったのか?それはソフィーがお祈りをしたことから始まっています。子どもだったら、眠る前にお祈りをするのは別に普通ですよね。ただ、GOODENDで母親の姿になった子守唄が言ったように、ソフィーはある大切な言葉を言っていません。もちろんそれは「おやすみなさい」の一言です。
 ソフィーはずっと偽物の大人で、「おやすみなさい」を言えずに過ごしてきていました。歪んだ依存心である恋心を妖精に預けることで、また母親に「おやすみなさい」と言って眠ることで、ソフィーは本当の自分、失っていた子どもとしての自身を取り戻し、「やりたいことがたくさんある」と明日目覚めることを祈って眠っていきます。嫌なことしかないから朝起きるのが怖いと言っていた状態から、脱出したんです。人間の世界へ戻った後のシスターとの会話で、彼女は「聖人」のような偽物の大人であることより、人間でいたいと言っています。そして人間として大切なことは、一日一日を精一杯過ごして、夜に「眠る」ことだと。そういった人間の姿こそ、サンドマンや妖精たちが愛する人間の本来の姿なんじゃないですかね。
 子どもに戻ったソフィーは、色々と行動を始めます。パパにはどうして一緒にいてくれないのと怒り、リーガンにはやり返し、アンを嘘つきだと責めます。シスターには子どもじみたことを!と叱られますが、ソフィーは辛いこと全てを我慢して自分を苦しめるよりはこの方がいいと考えています。ソフィーが言った聖書の言葉、「天の国はこのような者たちのもの」についての解釈はたくさんあると思いますが、作者は要するに自分の気持ちに偽りなく正直に生きるべきだという意味にとっています。ソフィーは敬虔なクリスチャンではないですが、一周回って、神様に認められるような子どもとしての自身を手に入れられたのかも知れません。
 そしてデヴィッドについてですが、ソフィーはピンクの宝石をサンドマンに預けたままなので、もう彼に対して恋愛感情を抱いてはいません。代わりに、眠る前に言っていた「デヴィッドと友達になりたい」を実行していきます。彼女は、自分の失恋をこれから完成させなきゃいけないんです。TCMのデヴィッドは諦めないことを選択したけれど、ソフィーの場合は逆ですね。
 色々ごちゃごちゃと語ってきましたが、今回のストーリーは、ソフィーが「おやすみなさい」を言うための物語だったという訳です。そこが一番大事で、他のエンドではそれが叶いません。子どもに戻って、母親に側にいてほしいと願い(だから子守唄は母親の姿になります)、「おやすみなさい」を言って眠ることがGOODENDの条件でした。

・まとめ
 TSM製作の感想はただ一つです。めっちゃしんどかった。それに尽きます。
 元々女の子を主役にするのがすごい苦手なこともあり、慣れない不思議な世界が舞台だったりで…。あとプライベートが結構忙しい時期だったってのもありますね。おかげでテスト版はバグパラダイスでした。本当にテストプレイヤーの皆さんにはご迷惑をおかけして申し訳ないです。
 今作で決意したのは、もう二度と不思議な世界を舞台にしたゲームは作らないということです。「何でもあり」の不思議ワールドって、空想力や想像力のある方だったらステキなものを生み出せるのかも知れませんが、私にはまったく向いていないようです。ダジャレに逃げてるところでそれが窺えますね(笑)
 でも、TSMは作って本当に良かった!色々勉強になったし、イベントを作る力も少しついたような気がします。今作で学んだものを糧に、これからも色々作っていきたいですね。
 そして今作は、いつも私の作品を英訳してくださっているvgpersonさんにご協力を頂いて、英語版を同日公開とさせていただきました。Twitterで海外の方から早く次回作をやりたいとのお声を頂いており、何とかできないかな〜と思ってvgpersonさんに打診したところ、ご快諾いただけましたので!
 さらに、今作にはまた違った形でのある方々からのご協力をいただきました。おかげで、TSMを彩りある作品に仕上げることができたと実感しています。Choco.laitさん、Daveosityさん本当にありがとうございました!
 以上、TSM製作についての考察や設定、裏話等を書いてみました。ものすごい長い上に、文章がおかしいですね。ここまでお付き合い下さった方、ありがとうございました!



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